生きもの千夜一話 by 金井塚務

大型ほ乳類の生態学的研究に関するエッセイ、身の回りの自然、旅先で考えたことなどをつれづれに書き連ねました。

クマゲラの巣を見つけた!! (119)

 クマゲラって鳥、知ってますか?真っ黒な身体に赤いベレー帽といった出で立ちのキツツキである。

 本州には、アカゲラオオアカゲラアオゲラコゲラ、アリスイといったキツツキの仲間が暮らしており、時折見かけることがある。とくにスズメほどの大きさのコゲラは町の公園などでも出会うことができる。 ところがこのクマゲラというキツツキは主に北海道の原生林に生息していてるのだが、東北地方の一部でも生存していることがわかっている。とはいえ、最近では東北地方での生息地は白神山地や森吉山(秋田)などに限られているとの報告がある(日本のクマゲラ・藤井忠志・北大出版会 2014)。

 かつては、会津ー山形にまたがる飯豊連峰や日光にも生息していることが知られていた。しかし多くのその生息地では絶滅したらしく、北東北のブナ林にごく少数が細々と生き抜いているらしい。つまり絶滅の危機に直面しているということなのだが、その生態(暮らしぶり)はまだわからないことが多い。

 手元に生きたクマゲラの写真がないので、ウトナイ湖サンクチュアリー(日本野鳥の会)の展示剥製を移したものを紹介しておく。

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 これまでの文献を当たってみると、本州のクマゲラはブナの原生林に生息し、ムネアカオオアリをよく食べるということだ。ムネアカオオアリというのは森林内に生息する大型のアリで、文字通り胸の部分の体節が赤い(オレンジ色)をしている。朽ち木に巣を作って生活している。前回の北ノ俣沢を歩くの項で、イワナの胃袋からも見つかっているあのアリである。

 前置きがだいぶ長くなってしまったが、このクマゲラが現在も生息しているかどうか確認することも今回の調査の眼目の一つである。というのもアセスでもクマゲラは現地調査の結果では、水没地域に生息していることになっているのだが、個体群は維持できているのかどうかいささか心許なかったし、その生活環境を見定める必要があったからである。

 そこで、木賊沢、北ノ俣沢と沢沿いの森林形態を視察し終えたこともあって、野鳥担当の花輪さんを中心に5名で尾根筋を歩いてみることにした(前回の報告に掲示した地図のクロ線)。木賊沢・合ノ俣沢の合流点を渡渉し、急斜面にとりつきよじ登る。数十メートルも登れば尾根道にでる。その少し手前の斜面に胸高直径40cmほどのブナがあり、地上4.5mほどのところに野球のボールほどの穴が開いているのを見つけた(同地図の①の位置)。

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 これがその穴である。メジャーを当てて大きさを図ると、縦10cm、幅9cmほどであることがわかった。穴の下側には爪でひっかいた跡が残っていて、傷の跡の様子からするとそれほど古いものではないことがわかる。育雛用の巣穴か休憩用の巣穴かわからないもののクマゲラの巣穴とみてほぼ間違いない大きさである。

 ちなみに、キツツキ類の巣穴の大きさは、これまでの調査結果(日本鳥類大図鑑 増補改訂版1965)から

 クマゲラ   8.5~13cm

 オオアカゲラ 6.5~6.8cm

 アカゲラ   4~6cm

 アオゲラ   4.5~5.2cm

と言うことである。

 ここ成瀬川流域ではクマタカイヌワシなどの大型猛禽類を頻繁に観察することができる。それほど豊かな森林でもある。そして攪乱と安定という極めて生産力のある自然がここに存続していることの意味を再認識する必要がありそうだ。

 ちなみに、アセスでの評価は「本事業区域には、本種の生息に適すると考えられる環境の一部であるブナ群落が分布するため、この環境が湛水区域では水没し、また工事実施関連区域では工事に関わる部分に該当した場合は消失する。しかし、本事業区の他にも成瀬川流域には、ブナ群落が広く分布し、その現状が維持されるために本種の生息地の保全は図られる。したがって、クマゲラについては、ダム建設による影響は少ないと考えられる」という。

 こうした予測はアセスの常套手段であるが、まったく科学的な予測となっていないことは読者諸氏にはあまりに明らかであろう。

同じような森とは、誰にとってのことなのか?クマにはクマの、クマゲラにはクマゲラのそれぞれ異なる価値をもつのが自然というものである。主体を無視した環境論は不毛であるだけでなく有害ですらある。安定と攪乱それが成瀬川流域の特徴であり、多様性と生産性を維持する要因の一つである。こうした動的で豊かな森でこそ多くの生きものが生きていけるのである。これ以上の破壊はもうやめようではないか。日本国民の将来のために。

 

 

 

成瀬ダム予定地-北ノ俣沢を歩く (118)

 前回、ダム予定地を下見した様子を報告したが、そのときは雪解け水で増水した沢を歩く事ができなかったので、(地図の赤いピンマークを通るように)中腹を迂回するように歩いたのである。今回は鳥の調査(担当花輪さん)に同行して北ノ俣沢と木賊(とくさ)沢、そして北ノ俣沢と合ノ俣 沢に挟まれた尾根筋を歩いてきた。

 初夏の森を水につかりながらの楽しくも厳しい調査で、それぞれに面白い発見があったのだが、今回はそのうちの北ノ俣沢の状況について報告しようとと思う。 

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  地図の赤線で囲った範囲(夢仙人大橋より上流部のみ図示)が湛水域である。およそ標高530m弱までが水没する地域となる。下の写真は水没予定の北ノ俣沢から夢仙人大橋を見上げたところである。満水時にはこの橋のすぐ下まで水がたまる事になっている。

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 北ノ俣沢の特徴は谷底の幅が広く、流れが比較的なだらかであるが、その一方で両岸の斜面は崩落しやすく、至る所にガレ場ができているという点にある。多雪地帯にあるためもろい斜面は積雪によって崩壊することもあって、そこにはフキなどの草本類が繁茂する。これが春先のクマやカモシカなどの大型ほ乳類の採食地として大きな価値をもっているようだ。川沿いのテラス状になった場所に設置したVTRカメラにはこれらのケモノたちの姿が写っていた。特に冬眠しないカモシカにとっては、ガレ場や沢筋の法面にできる草地は、早春の採食地として重要な意味を持っているに違いない。

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 そして広い河原の石の上には、テンのフンがそこかしこに残されていて河原が春先の重要な生活場所となっていることがうかがい知れる。

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 同じく河原には大きな石のくぼみにできた水たまり(止水)があり、そこはヒキガエルトウホクサンショウウオなどの産卵場となっている。これらはいずれもダムが完成するや深い水底に消えてしまうことになる。急峻で崩落しやすい斜面にはさまれた北ノ俣沢にあって、河原に点在する止水はあこれら両生類にとって極めて重要な産卵(再生産)の場となっていることを考えれば、個体群の消滅は避けられないであろう。

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 それは両生類に限ったことではない。ダイモンジソウなどの植物群落にも大きなダメージを与えることになる。

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 沢を取り巻く森林からは、エゾハルゼミの声が野鳥の囀りをかき消す勢いで響いてくる。もう初夏の気温なのだ。雪解けも早くこの時期にしては水量が少ないという北ノ俣沢をさらに遡上する。今日(5月28日)は設置したカメラの点検をしなければならない。そこまではもう少しだ。

 北ノ俣沢にも少ないが川沿いにテラス状の湿地があって、渓畔林ができている。そこにカメラを設置して大型ほ乳類の動向を観察しようと思っている。どのような成果を上げられるか、いささか心配ではあるが、やるだけのことはやっておかねばなるまい。

            ☆  ☆  ☆  ☆

 今日の夜は、木賊沢(とくさざわ)で野営する予定である。野鳥の調査には早朝からの行動が欠かせないので、みな老骨にむち打って頑張っている。ということもあって食糧調達を任されたSさんがイワナを釣るという。我々に同行してくれたので、釣り上げたイワナの胃袋をちょいと調べさせてもらった。下の写真。

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 20cmを超えるイワナの胃袋から出てきたのは、ムネアカオオアリ、エゾハルゼミをはじめハチの仲間や甲虫の仲間ばかりで水生昆虫類はほとんど見つからなかった。イワナなどの渓流魚は水生昆虫を主な食糧としていると思いがちだが、実際はそうではない。ほとんどは陸生生物がイワナを支えているのだ。つまり流れに沿って樹林が連続していることは渓流魚にとっても大きな意味があるということになる。陸生生物と水生生物との相互作用が渓畔林や河畔林生態系にとって重要な要素なのである。 

 何とかカメラのメンテを終えて、もう少し先へ進む。

 大きな崩落地に出た。ここは岩手地震か東北大震災の折りに崩落した可能性があると言うことだ。斜面にはまだ雪渓が残っている。中央の巨樹は、サワグルミでかなり古い。この近くでアセスリストには記載がないセッコクと思われる植物を見つけたが、この崖地にはアセスでは見つからなかった希少植物があるような気がしている。

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 次回はクマゲラに関する情報をお届けする予定です。 

 

 

 

 

 

HFMエコロジーニュース117ー秋田・成瀬ダム予定地を歩く

成瀬ダム予定地を歩く

 秋田県南東部、岩手県宮城県との県境近くに東成瀬村はある。成瀬ダムは利水、治水を目的とした多目的ダムであるが、多目的は往々にして無目的であることはよく知られた事実である。当然地元では貴重な自然を破壊する事業として反対運動も起きており、現在、仙台高裁秋田支で控訴審が進行中である(成瀬ダムをストップさせる会)。
 この控訴審において自然の価値を争点とするための調査が、このたびの調査行となったというわけだ。というわけでじっくり腰を据えての調査というわけにはいかない。この数ヶ月でめぼしい成果が要求されるという厳しい日程の中での調査である。
 昨年の秋に某団体からの助成を受けることになったのだが、ここ東成瀬村のダム建設現場周辺はかなりの雪が積もる地域でもある。したがって実質的に調査ができるようになるのは雪解け後の5月中旬以降ということになる。本当ならば、イワナが産卵する10月末頃から11月初旬にかけてツキノワグマの魚食の証拠を押さえておきたかったのだが、やむを得ない。というわけで4月30日に予備調査という形をとって現地へ趣いたという次第である。
 4月30日のい朝、前日からの小雨がようやく止みはしたものの、いつまた降り出すかわからない厚い雲が空を覆っている。気温も思ったより低く、準備してきたフリースを着てもまだ寒いくらいだ。現地付近の尾根は今朝まで降っていた雪でうっすらと白い。現場の少し手前に工事用ための門が設置されており、9時にならないと開かないという。その門まで来ると、工事事務所の職員がやってきて、雪のためこの先が通行止めとなっていてゲートを開けることはできないという。ということはここに車を置いてかなりの距離を歩かねばならないということになる。天気は悪い。最悪の状況だ。が、しかし車が一台、ゲートの、向こう側に止まっているではないか。聴いてみれば今日の調査に参加する人の車だという。朝来たときは門が開いていて門の存在に気がつかず、前の車に続いて入ってしまい、気がついて集合場所へ戻ってきたら、すでに門が閉じられていたというのだ。事務所の職員の権限では門を明けることができないという。午後5時ころに再度ここへ来てそのときに一時的に門を明けるのがそれまではダメだという。行くに行けず、帰るに帰れない。しかし考えてみれば、車が一台でもゲートの向こう側にあるのだからこれを使って調査員をピストン輸送すればいいということに気がついた。不幸中の幸いである。こうして私たちは無事、調査地(夢仙人大橋)へ行くことができたのだ。

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 9:30 曇り 北寄りの風:強 今日は成瀬川の支流、北ノ股沢へ入る。雪解けで水量が多く、沢を遡上することができないので、斜面を巻いて目的の場所へ行かざるをえない。直線距離にすればそんな遠くでもない。しかし斜面をトラバースしていくつかの沢を超えていくのだが、これがかなり難儀である。斜面が急であるうえに越えるべき沢はほとんど崩落しており沢の源頭部近くまで登っての渡渉しなければならない。しかも雪で押し倒されている樹木の枝は斜面下方に向かって地面近くに伸びているため、枝をかき分けかき分け歩くのだから歩きにくいことこの上ない。本来なら1時間ほどのところだと言うがそこを4時間近くかけてやっと到達できた。年寄りいじめの斜面である。
 斜面を歩いていて気がついたことがいくつかある。ここはとにかく斜面崩壊が頻繁に起こるということだ。火山灰のような土だからちょっと激しい雨や積雪で簡単に沢や斜面が崩落するようだ。そのためブナ、ミズナラ、トチ、ダケカンバなどの巨樹がまばらで比較的若い樹齢の林分となってる。攪乱が頻繁に生じるので裸地かした林床にはカタクリがよく繁茂している。こんな場所はニホンカモシカには好適な生息地なのだろう。フンも見つかった(写真)。ブナの若枝を食べたリス、あるいはムササビ、モモンガなどの樹上性齧歯類の食痕も見つかった。そして古いブナ、ミズナラには大きな樹洞ができていて、ツキノワグマの越冬場所になりそうだ。

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 急斜面を下って、北ノ俣沢から20mほど高い位置(標高530m)まで降りてくる。このあたりになるとテラス上の平坦な地形も出てくるが、そこはもうダムの湛水域で、ゆくゆくは人造湖の底に沈んでしまう場所である。
 こうしたテラス上の場所はところによって湿地状になっており、草本類が生育する場所でもある。そればかりではない。いわゆる移行帯(エコトーン)に当たるこうした場所は水域の生物と陸域の生物との相互作用がみられ、生物多様性と生産性の高い場所でもある。

 この時期、イワウチワ、キクザキイチゲ,ショウジョウバカマなどの草本類も花を咲かせていた。

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 北ノ俣沢をはじめ急峻な斜面が続く成瀬川支流域にあって、川沿いの緩斜面や平坦なテラスは動植物にとって貴重な生活場所でもある。試験的に比較的広いテラスの湿地にカメラをセットして動物たちの動きを探ることにした。今後の成果が楽しみである。
 周辺の斜面のを見れば、あちこちに斜面の崩落が見て取れる。残雪があって詳しい状況はよく見えないが、火山灰土が堆積した斜面は簡単に崩落するようだ。ここまで歩いてきたところでも、沢筋はことごとく堆積土が崩落し、部分的に基盤が露出しているところや、基盤そのものも崩落し岩石が堆積しているところも少なくない。これが少し大規模におこれば、岩塊流とか風穴といった地形になるにちがいない。崩落した急斜面(法面状)にはフキノトウなどの草本類が生育し、春先の菜畑といった状況にある。これらも野生動物にとって重要な食糧資源となっている可能性がたかい。

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 ここの林相は常に崩落するような不安定な場所(主に沢筋)と比較的安定した(小尾根)が縞状に分布しており、それが林相に反映している。つまり、若齢樹と老齢樹とが列状に混交していおり、生活場所の多様性を生み出している。
 わずか1日の予備調査なので、詳細はまだ不明だが、ここに巨大なダムができることで出てくる影響はそう軽微ではないことは間違いない。

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 河川流域のテラス状の湿地(写真上)はすべて水没してしまう。それは生物多様性の際立つエコトーンの消滅を意味し、生物生産の減退を招くおそれが強い。また、これほど頻繁に崩落を繰り返す地形にあっては、土砂堆積の問題も無視できないに違いない。ダム湖底には短期間の内に堆砂問題が表面化するであろう。

 何よりも、森と海をつなぐ動脈ともいえる河川の分断は、物質循環の大きな障害となり東成瀬地方全域の生物生産力を減退させるのみならず、雄物川流域をはじめ沿岸部への影響もはかりしれない。それはかなりの時間を経過して後に顕在化するにちがいない。
 これ以上、ムダな公共事業で我々の招来を食いつぶすことは許されない。地方再生はまず生物生産の再生でなければならないはずだ。

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タムシバについて考える-HFMエコロジーニュース116

季節の移ろいは速い。特に春はそうだ。
駆け足でやってきて、あっという間に通り過ぎてしまう。
私は宮島の対岸に居をかまえているのだが、4月上旬にはすでに花は散り葉桜の趣を見せ始めている。しかし同じ廿日市市内でも北部吉和地区は標高も高いこともあって、春の訪れは遅く、サクラは4月下旬にやっと満開となる。東北地方の福島県ほどの気候である。
 森林帯で言えば、暖温帯照葉樹林帯から中間温帯をへて冷温帯落葉樹林体(ブナ林帯)まであり、まるで本州の森林植生の見本市のようである。この利点を環境教育やエコツアーなどの観光に活かそうという発想が出てこないのがなんとも不思議なのだが、今はやりの名ばかりエコツアーがはびこるのも嫌なのであえて口を出さないことにしている。
 それはともかくニホンザルがいなくなった(実際にはまだいるのだが)宮島の照葉樹林帯から西中国山地の一角にある冷温帯落葉樹林帯の細見谷渓畔林へとメインフィールドを移して早、十数年。ここにはニホンザルはいないがその代わりツキノワグマがいる。その細見谷渓畔林周辺は4月下旬になってようやく桜が満開となる。このように広島県内の狭い地域でも桜前線の移動は3月下旬から約一月をかけて北上するのだ。ただしここのサクラは植栽されたソメイヨシノではなく、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラといった野生のサクラである。
 私は動物も植物も野生のものが好きだ。サクラとて例外ではない。長い進化の過程をへて、それぞれがそれぞれの暮らしを持ち、おたがいが関わりを持って世界を構築している。そんな関係を探るのが好きなのだ。
 とはいえ今日の話題はサクラはサクラでも苗代桜と呼ばれている「タムシバ(Magnolia salicifolia (Sieb. et Zucc.) Maxim.)」について考えてみようと思う。

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3月に入り気温が上がってくると、瀬戸内のこのあたりでもほんの数キロ内陸に入るとソメイヨシノの開花に先だって、山腹に白い花が目につくようになる。野生の花木であるから毎年豊年ということはないが、数年に一度、まるで雪が降ったように山肌がのほぼ全域が白くなることがある。(ちなみに宮島ではクロバイの当たり年がこのようになる)
 今年はその当たり年である。2013年、2011年も当たり年だったので、ここのところ2-3年周期で当たり年となっている。
 地元ではコブシの花が咲いたというが、これはコブシではなくタムシバというモクレン科の樹木である。遠目にはコブシもタムシバも見分けはつかないほどよく似ているが、よくよく見れば、枝振りや花の直下に葉がつくか着かないかといった違いはある。漢方に辛夷という薬があって鼻づまりや蓄膿症に効くとされているが、その辛夷としても利用される樹木である。
 苗代桜とも呼ばれているように、かつてはこの花が咲くのを待って苗代作りをしたという。今は昔の話である。今日の農業は効率化と工業化の波に飲み込まれ、田植え機にマッチした苗を工業的に生産されているので、苗代桜などという言葉も消えつつある。こうして言葉とともに文化も消えていくのである。その損失はいかばかりであろうか。
 愚痴はさておくとして、このタムシバの生育地にある特徴が見て取れることに気がついた。自宅からフィールドの細見谷へは、県道30号線-国道186号ー国道488を経て十方山林道へと入り細見谷へ至るのだが、その間ほぼ全域でタムシバの花を楽しむことができる。2016年4月9日土曜日には、さすがに沿岸部に近いところでは花期はとうに過ぎていたが、内陸部へ入り標高が上がるにつれて、コウヤミズキの黄色い花とともにタムシバの花が目立つようになる。

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 自宅から細見谷へはほぼ直線的に北北西に1時間半ほど走るのだが、沿岸部を離れて旧佐伯町に入る手前から、このタムシバがほぼ左手側の斜面によく目立つのである。つまり北向き斜面にということだ。図鑑などでは、日当たりの良い丘陵地、山腹、尾根筋に多い、とされている。確かに日当たりはいいが、日照時間は限られている。細見谷でもやはり北向き斜面によく目立つ。これは偶然だろうか。それとも何か関係があるのだろうか。タムシバの目立つところは尾根筋と山腹に走る小尾根のように見える。おそらく、腐葉土層がうすいガレ場や岩場となっていそうなところである。北向き斜面だと日照時間が短く、比較的雪解けが遅れる。そのため尾根筋でも水不足となりにくいのでがないだろうか。腐葉土層は薄く、水気があり、日当たりは良いものの日照時間が短く、やや気温が低い、そんな場所がタムシバの生息域なのかも知れない。下の写真は細見谷川右岸の女鹿平山系の北斜面に生育するタムシバである。ブナ、ミズナラ、シデ類など落葉樹の芽の膨らみの淡い色の中で際立つ白い花は、春を呼ぶ華やかさがある。天然杉の緑ともいいコントラストを醸し出している。この時期は本来、まだ雪が林道を覆っていて入れる状態にはないのだが、今年のように雪解けが速いと思わぬ発見があり、苦労のしがいもあるというものだ。

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編集・金井塚務 発行・広島フィールドミュージアム
この調査は、広島フィールドミュージアムの活動として行っています。当NGOは細見谷渓畔林を西中国山地国定公園の特別保護地区に指定すべく調査活動を行っています。特にツキノワグマにとって重要な生息地であり生物多様性に秀でた細見谷渓畔林域はツキノワグマサンクチュアリとして保護するに値する地域です。
    広島フィールドミュージアムの調査研究&自然保護活動はすべてカンパによって行われています。
皆様のご協力をお願いします。                                                             
 カンパ送付先 
広島銀行宮島口支店 普通 1058487 広島フィールドミュージアム 
または  
郵貯銀行振込口座 01360-8-29614 広島フィールドミュージアム 

HFMエコロジーニュース115-細見谷へ春を探しに

 

 例年だと、雪が解けて細見谷へ入れるようになるのが4月中旬から下旬なのだが、今年はどうやら雪解けも早いのではないかとという気がして、まだ3月だというのに杉さんと一緒に下見に出かけた。 案の定、主川をさかのぼって林道入り口付近まで来ると、斜面には少しばかり雪が残っている。さすがに早まったようだ。それでもと、林道へ入ってみたが、300mほど行ってみたものの、その先の林道にはまだしっかりと雪が残っていた。あえなく断念する。

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 山腹のブナを見るとイヌブナの花芽、葉芽があかく膨らんでいるのがわかる。もうすぐ芽吹きだ。そしてこの膨らんだ花芽を目当てにクマがやってくるかもしれない。細見谷ではブナの花芽を食べたフンをいくつか見つけているが、比較的少ないのは何故だろう。沢筋のオタカラコウやササの新芽(タケノコ)やシシウドなどにより引きつけられるのだろうか。
 渓畔林行きを断念し、支流の一つろくろ沢へ入ってみる。空気はあくまで冷たいが、日射しは強く春が近いことを肌で感じる事ができる。この時期にしては水量が少ないが透明度は高く、その清冽さはなんともいえずいいものだ。所々にゴギの産卵床らしいものも見えるが、どうも生き物の気配は薄い。チャルメルソウもまだ芽吹き前だし、残雪の上にはトチ実の殻やブナの殻斗、枯れ葉が冬の名残をとどめている。

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 沢筋に一つ、フキノトウが顔を出していた。春一つ、発見。

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 こころくろ沢は生き物の気配の濃いいい沢だったのだが、年々、巨木が姿を消し、沢の状態も悪化しているようだ。特に今年は、雪の降り方が例年とは違って、湿って思い雪がどかっと降っては溶けを繰り返したようで、トチノキ大枝がねじれ折れてい、それが沢を夫妻であちこちに小さなダムを形成し、よどみが増えている。それに伴い、河床には泥が堆積し、大きく様相を変化させている。
 そうしたよどみに、おしどりがひっそりと越冬しているのが見えた。この沢周辺はおしどりが営巣するのに都合の良い樹洞が多く、貴重な繁殖地となっているようだ。

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 沢沿いの湿地で妙なものを見つけた。動物の毛のようなものだが、どうやらノウサギのものらしい。ノウサギの毛皮は捕食者に捕まるとすぐに破れてしまう。皮を斬らせて身を助くということのようだ。この谷にはオオタカハイタカ、フクロウはもちろんクマタカも姿を見せ、猛禽類の狩り場ともなっている。ノウサギも安閑とはしていられないのだ。 そうこうしているうちに、黒い雲が広がり、雪がちらついてきた。寒い。
 ヒキガエルもまだ出てきてはいない。あと2週間で一気に春となりそうな気配を感じつつ、ろくろ沢を後にした。

追記
 今年の雪はスギの植林地にも被害をもたらしている。手入れの悪い植林地のスギは、生育も悪く、細いスギが密に生育しているので、まるで楊枝の林のようにみえる。そこに重たい雪が枝に積もるのだから、少し強い風でも吹けばたちまち折れて倒れてしまう。主川沿いの植林地でもそんな光景を見ることができる。ただこうして折れたスギの植林地はやがて林床に陽が差し、埋土種子が芽吹いて本来の植生が復活する可能性が高い。すこしそっとしておくことも一つの方法ではある。

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やんばる地域の国立公園化計画の問題点

 沖縄本島北部のやんばる地域を世界自然遺産登録を目指す政府は、同地域の国立公園化を計画している。しかしこの計画ではやんばるの自然を保護するためのものではなく、かえって多くの生物の生息地の分断をもたらし、孤立した個体群の衰退を招く危険性があるとして、以下のような意見書を記者会見をして公開するとともに関係各省庁に提出することにした。

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意見書・やんばる地域の公園化計画の問題点

   2016年3月、環境省沖縄本島北部のやんばる地域を国立公園化する方針を発表した。これは世界自然遺産奄美琉球」への登録をにらんでのことだという。国立公園の設置は自然公園法に基づき、その優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的としている。これまでの国立公園は風景地の保全と利用に重きがおかれ、生物多様性の保護はその下位に置かれていたと言っても過言ではない。しかしやんばるの国立公園化の方針が世界自然遺産登録のためにあるとすれば、優先すべき目的(機能)は、固有種を含むやんばるの生物相の保護・保全にあることは言をまたない。そこでここではこの計画案がやんばるの個体群保護にどのように関わるのかという視点から検討してみることにする。この計画ではやんばるに生息する固有種をはじめ地域個体群を維持し続けることは不可能であり、むしろこの計画が実施されることで公園域外の森林生態系の破壊が歯止めなく続く可能性すらある。以下その理由について少し具体的に説明してみる。

 

1.指定地域が狭すぎる

 沖縄本島のやんばるでは国立公園として指定される地域(陸域)は13632㏊で、やんばる地域、約34,000haの40%に過ぎず、その内訳は以下の通りである。

 

 

 

 

やんばる全域に対する割合(34000ha)

特別保護地区

    790ha

  5.8%

  2.3%

第1種特別地域  

   4,402ha

  32.3%

  12.9%

第2種特別地域  

   4,071ha

  29.9%

  12.0%

第3種特別地域  

   3,334ha

  24.5%

   9.8%

普通地域       

   1,035ha

   7.6%

   3.0%

陸域合計       

  13,632㏊

 

  40.1%

 

  この区分けについての問題点は後述するが、決定的に指定面積が狭すぎることを指摘せざるを得ない。やんばる地域よりやや狭い西表島については、全島を国立公園化(29000ha)する方針であることを考えれば、やんばる地域の公園化計画の問題点が浮かんでくる。その背後には、やんばるの林業問題がある。やんばる地域では主に国頭村で県と村が競うように森林整備事業を展開してきたし、今後も継続することを目論んでいる。たとえば国頭村でも村有林で5ha規模の皆伐(1~数カ所)を毎年続けている。

 このようなやんばる地域における林業の問題点は、パンフレット「生物多様性保全の視点から考える-やんばるの今と未来」でも指摘されているように、育材をめざすいわゆる本土の林業とはことなり、様々な名目の補助金で成り立っている林業もどきの事業と言わざるを得ない。

 一方、県営林では「やんばる多様性森林創出事業」(平成25年から3年間)と称して伐採(皆伐)をしており、森林の劣化は年々深刻な状況になっている。

  やんばるの国立公園化計画の環境省案が何を目的として立案されたのか理解に苦しむのだが、少なくともやんばるの生物多様性や固有種を含む種または個体群の保護に有効に働く規模になっていないことは指摘しておかねばならない。これまでのやんばる地域における森林整備事業(森林施業や林道開設など)が自然破壊の元凶として起こされた住民訴訟(通称・命の森やんばる訴訟)では、世界自然遺産登録を目指すという環境行政との整合性がとれないとして、これまでの森林整備事業の不合理さを指摘し、事業続行に一応の歯止めをかけた。しかしこの環境省による国立公園化計画が実施されるとなれば、その縛りが外れることにもなりかねない。逆に言えば、環境省が県や地元自治体に配慮して、国立公園化区域をきわめて限定的に設定したものと受け取れる内容となっている。

 つまり国立公園区域を限定すること、特に規制の厳しい特別保護地区や第1種特別保護区域を限定することで、裁判所の決定を事実上覆し、合法的に自然破壊ができる計画となっていることを指摘しておく。つまり、本来の世界自然遺産にふさわしいやんばるの生物多様性の保護を目的とした計画ではないということに大きな問題がある。

 では、やんばるに固有な自然(生物多様性)の保護を目的とするためにはどのような計画であるべきなのだろうか。それについて検討してみよう。

2.保護地区の区分けの問題点

 前述したとおり国立公園には保護の必要性に応じていくつかの区分がなされている。ここで開発による現状変更(破壊)が厳しく制限されるのは、特別保護地区とせいぜい第1種特別地域だけで、それ以外の地域では事実上、利用に厳しい制限はなく、開発が可能となる地域である。これまで多くの国立公園・国定公園、天然記念物指定地域ではあらかじめ開発計画がある地域においては本来特別保護地区に指定してしかるべき地域であっても、意図的に第2種特別地域より下位の保護地域とされてきた事例は少なくない。たとえば、西中国山地国定公園内の細見谷渓畔林(大規模林道計画)や天然記念物・阿蘇北向谷原始林(立野ダム計画)などがある。

 やんばる地域は、大宜味、国頭、東の三村(面積は34000h、S-Tライン以北で約30000ha)にまたがる本島北部の森林帯を指し、イタジイやオキナワウラジロガシが優占する亜熱帯常緑広葉樹林帯が大半を占めている。ここにノグチゲラヤンバルクイナ、トゲネズミ、ケナガネズミ、リュウキュウコテングコウモリなどの小型コウモリ類、ヤンバルテナガコガネリュウキュウヤマガメ、イシカワガエル、クロイワトカゲモドキなどの固有種をはじめ幾多の在来種が生息している。それ故、政府としても世界遺産登録を目指すのであろう。そうであればやんばるの森に見られる固有性と多様性の保護を保証する要件を備えた内容であることが必然的に求められる。そうした十分な保全措置を前提として、その利用が許容されるはずである。

 ところがこの計画案の内容を見る限りそうはなっていない。たとえば、やんばるの自然生態系にあって重要な要素であるオキナワウラジロガシは、うち続く皆伐によって年々減少していることが推定されている状況にあって、伊江川流域には比較的まとまった群落が残っている。中でもオキナワウラジロガシを含むやんばるの原型的な森林植生が保存されている林道・楚洲仲尾線の計画地一帯は全て第3種で開発可能な地域に指定される予定となっている。同じく謝敷の森も第3種で破壊から逃れることはできない【別紙1・2参照】。

 これらはほんの一例に過ぎない。厳密に保護される地域はきわめて狭く、極論すれば保護地域は限りなく0に近いと言うべき計画に驚くばかりである。

 本来、保護区の設定は科学的な調査に基づいて計画されなければならない。それは国際条約(世界遺産条約および生物多様性条約)で課される義務でもある。

 たとえばノグチゲラ1種を考えても次のような視点が欠かせない。

 ノグチゲラは主にイタジイを営巣木として利用しているが、それもイタジイならばどれでも良いというわけではない。直径20~30センチを超える太さを持ち、巣穴の前方に適度な空間が確保できる、材が堅過ぎないなどの要件を備えていることが重要である。その上で固体維持のためにどれほどの餌資源が必要かなどを考慮し、さらに個体群として維持するためにはどの程度の個体数、生息密度が必要かを科学的に推定するという作業が欠かせない。保護区の設定はそういう手順を踏んでなされるべきである。

 しかるに近年、ノグチゲラの分布域の拡大や営巣木の変化(タイワンハンノキやリュウキュウアカマツ)などをとらえて、個体数が増加しているとの論調もあるが、仮にそれが事実であったとしても、これは必ずしも喜ぶべき現象としてとらえることはできない。なぜなら、これは本来の生活資源がまかなえず、その代償として人為的な環境へ順化した結果とも見られるからである。この順化あるいは馴化という現象は、場合によっては人為淘汰を促し、本来の生活様式を営むことができない個体群の拡大をもたらす可能性がある。その行き着く先は、野生個体群の絶滅である。この顕著な例は、安田(あだ)地区の養豚場のミミズに依存したヤンバルクイナである。これは餌付けに近い人為的環境下での個体数増加で、本来の生息地である森林内での個体群の動態は不明である。もしヤンバルクイナがこうした人為的環境下でしか生息し得ない状況下に置かれれば、それはほぼ、野生個体群の絶滅を意味している。

 保護区域を限定し、その周囲に広がる森林(バッファゾーン)を皆伐し、自然環境を破壊することを許容するとすれば、フイリマングースなどの外来種に適した環境の創出にもなりかねず、やんばるに固有な在来種個体群の縮小再生産をもたらすであろう。そのような自然を世界自然遺産と呼べるのであろうか。

 また、やんばるの自然の固有性は目に見えるレベルにとどまらず、ササラダニ類などの土壌生物、菌類やそれとの共生体(ラン科植物など)などきわめて複雑である。つまりはその複雑な自然は長い進化の過程において形成されてきた歴史の産物でもある。世界自然遺産とはこうした歴史的(進化)産物の保護・保全を求めるものである以上、それにそった保護区の設定が求められることはいうまでもない。

 環境省が示した保護区区分では、個体群の孤立化と分断を招き、長期的にはやんばるの生物多様性を毀損し、種や個体群の絶滅を招来するものに鳴りかねない。

 つまり、保護区の設定は土地利用(開発)を前提にするのではなく、個体群維持を基本に据えるという意味では、環境省案は全く評価に値せず、強く再考を促したい。

 

なお、やんばるの自然貴重性と破壊の現状等は

 「生物多様性保全の視点から考える-やんばるの今と未来」日本森林生態系保護ネットワーク・やんばるDONぐりーず  2014年 

 「やんばるの森のまか不思議」 沖縄大学地域研究所 2011年

を参照のこと。

 

【別紙1】特別地域での伐採について

【別紙2】謝敷で行われた2015年度の皆伐

 

2016年3月23日

 

               日本森林生態系保護ネットワーク(CONFE Japan)

               代  表   金 井 塚       務

               やんばるDONぐりーず

               共同代表   喜   多   自   然

                      赤   嶺   朝   子

               顧  問   平   良   克   之

               NPO法人・奥間川流域保護基金

               代  表   伊   波   義   安 

               環境NGO・やんばるの自然を歩む会

               代  表   玉   城   長   正 

               沖縄・生物多様性市民ネットワーク

               共同代表   河   村   雅   美

                      吉   川   秀   樹 

               泡瀬干潟を守る連絡会

               ジュゴンネットワーク沖縄

               ジュゴン保護キャンペーンセンター

               「ヘリパッドいらない」住民の会

               琉球列島を自然遺産にする連絡会

               世話人    伊   波   義   安

               日本鱗翅学会会員

                      宮   城   秋   乃 

               日本甲虫学会会員

                      楠   井   善   久 

 

                            (以上順不同)

                     (連絡先)

                      沖縄県那覇市松尾2-17-34 

                      沖縄合同法律事務所

                         弁護士 喜  多  自  然

                      TEL098(917)1088 FAX098(917)1089

 
【別紙1】特別地域での伐採について

 

自然公園法上,国立公園の特別地域(特別保護地区を含む。)における伐採は,環境大臣の許可制である(法20条3項2号,21条3項1号)。しかし,許可基準(法施行規則15条)を見ると,おおむね下記の条件では伐採が可能とされている。

第一種特別地域:単木伐採,択伐(伐区における蓄積(立木の材積)の10%以下)

第二種特別地域:択伐(伐区における蓄積の30%(用材林)・60%(薪炭林)以下)

皆伐(伐区内の2ha以内)

第三種特別地域:制限なし。

択伐においても,伐区の設定の仕方や択伐の方法によっては大規模伐採が可能である。沖縄県は2013年より「やんばる多様性森林創出事業」と称して,帯状伐採,群状伐採,小面積皆伐等の検討を行っている。帯状伐採,群状伐採では,伐採場所を広く取れば皆伐と変わらない状態になるが,形式的にこれを択伐として位置づけることで,上記の許可基準の下でも皆伐と変わらない伐採が可能になる。実際にやんばる多様性森林創出事業では帯状伐採を択抜と位置づけた上で,皆伐と同様の伐採を行っている。

また皆伐においても,1伐区内で2ha以内と定められているにすぎず,同時に複数箇所で皆伐をすることや,毎年場所を変えて皆伐を繰り返すことも可能である。

第三種特別地域については全く制限がなく,大規模伐採が可能である。

したがって,伐採について規制が制度的に担保されているのは特別保護地区(やんばる全体の2.3%)のみである。

以 上

提出先 環境省沖縄県林野庁国頭村大宜味村、東村など

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うんちコロコロうんちはいのち

うんちコロコロうんちはいのち   きむらだいすけ さく・え
岩崎書店 2016年

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 うんちは排泄物とも呼ばれるように、多くの人は、不要なものいらないもの、あってはならないものと考えているかもしれない。たしかにうんち(フン)は動物が消化できないものを身体の外へすてるべきものなのだが、捨てる神あれば拾う神ありともいうように、不要物を利用する生き物がいることを忘れてはいけない。その意味ではうんちは排泄物でもあるが、生産物でもある。
 ただうんちにはたくさんの毒も含まれていたり、ひどく臭かったりする。だから排泄(生産)した動物や人にとっては直接の価値はない。とはいえ、このような毒もある生き物にとっては毒にはならないということがあるから生き物の世界は不思議でおもしろい。においだって、いやな匂いもなれればいい香りになることもある。
 たとえば、「くさや」という魚の干物は大変臭いが、なれれば大変おいしい食べ物となる。おいしい食べ物となれば、その臭さもごちそうに変化する。
 世の中は一事が万事これだ。多面性というのだろう。
 であれば、くさいうんちだって、おいしい食べ物として、あるいは生活の場としている生き物がいたっていいだろう。それがこの絵本のテーマである。
 動物の排泄物であるうんちを食べ、そしてそこに卵を産み付けて再生産する。この昆虫はうんちの中で生まれ、うんちの中で育つ。そして成虫となってもうんちを糧に生きる。このフン虫(フンコロガシをはじめとするコガネムシの仲間)だってうんちをする。そのうんちだって別の生き物(バクテリアなど)の食べ物(資源)となる。そしてやがて窒素や二酸化炭素などの無機物へと分解されて、大気や大地の中に戻っていく。つまりうんちはいのち(いきもの)をつなぐ一つの輪になっているということなのだ。
 とはいえ、うんちならどんなうんちでも良いというわけではない、ふんころがしにとっておいしいうんちもあればそうでないうんちもある。ここもまた面白いところである。フンコロガシが好きではない、ライオンのような肉食どうぶつのうんちを好むフン虫ももちろんいる。 うんちを通じていのちがつながっていることを楽しみながら知ることができる。なにしろ子どもたちは、とにかくうんちが好きなのだ。これは是非子どもたちに手にとってもらいたいし、おとなたちにはうんちのうんちくを子どもたちに語り聞かせてほしい。
 話は少し横道にそれるが、私もきむらだいすけさんの父親である木村しゅうじさん(漫画家にして日本を代表する動物画家・笑点カレンダーでもおなじみ)とは40年来の知り合いで、一緒に仕事をしたこともある。なかでも、サルを描かせたら右に出る人はいないとの評価を受けている木村さん挿絵を描いていただいた「にほんざる」(いちい書房)で吉村証子記念・科学読物賞(第6回 1986)をいただくことができたことは、私にとって数少ない記念碑である。
 うんちコロコロうんちはいのちの絵のタッチ、その雰囲気は木村しゅうじさんを彷彿とさせる。さすがに親子だなと感心したのである。ただ一つだけ欲を言わせてもらえれば、うんちをする際の尾の具合がもうすこし付け根をもちあげてその先を弛緩させるとよりリアルになるにちがいない。
 じつは私もかつて、うんこを巡る生態学入門を目指して、「うんころじー入門」なる本を出す予定で原稿をかいたことがあった。しかしその後あれこれとあって、原稿は手直しをすることもなくお蔵入りになってしまったり、「シカのフンからガラスを作る」というテーマで絵本をと思ってそのままになっていたりと、動物のうんちを巡ってはふんぎりの悪いことばかりだったので、この絵本は、私にとってもいい刺激となる作品での一つに違いない。
 世の中に「うんち(フン)」にまつわる図鑑や絵本は少なくないが、このように物質循環(いのちの連鎖)という視点(生態学的視点)で描かれたものはあまりお目にかからない。そこにこの絵本の価値がある。生き物は暮らしを通じて皆どこかでつながっているということを楽しみながら読み取っていただければ幸いである。 

 

消えゆく集落・消える食糧生産の現場

  この冬はどこも雪が少なく、寒暖の差が激しい。この急激な温度変化は生き物に大きな影響を与えるに違いない。場合によっては地域個体群の絶滅にもつながる可能性もあるだろう。このことについてはまた別の機会に譲ることにするが、温暖化がもたらすこうした変化は大きな問題となる。

 私が仲間とツキノワグマの調査フィールドとしている細見谷渓畔林地域(廿日市市吉和)は、知る人ぞ知る豪雪地帯でもある。冬の間、2mほども積もることもまれではない。今年はあまりにも雪が少ないのでもしかしたらと思って、ドライブがてら様子を見に行ってきた。

 さすがにまだ車が入れるような状況ではなかった。入山はもう少し待つことに。おそらく、4月初旬には入れるような気がする。もしそうであれば、ヒキガエルのカエル合戦(集団包摂行動)を見ることができる。過去に一度、見ただけだが、それは壮観なものだ。クマの活動もまだ先のことになりそうだし、春の到来を楽しみに待つとしよう。

 さて、その帰り道のことだ。旧吉和村を出て、旧佐伯町飯室にはいった標高700mあたりも沿道は雪に覆われ、小さな集落の畑も雪に埋もれていた(写真)。飯室は佐伯地区の最奥の集落である。写真左側の大きなスギに囲まれてこの集落の社叢があり、このスギの幹にはクマの爪痕も残る。f:id:syara9sai:20160219095944j:plain

 いかにものどかな風景なのだが、じつはこの集落、ほとんど空き家なのだ。畑も耕作されず、ススキの草原へと変貌しつつある。秋には美しい風景となる。日本の中山間地域の典型的な風景である。最近では、研修農場として一部活用されているようだが、経済至上主義の農業では、生き残れるような場所ではない。

 高齢者だけの集落では基盤整備など農業に欠かせない労働力が確保できず、しかも小規模過ぎて、効率化もなにもあったものではない。せいぜい自家消費の自給的農業がせいぜいだろう。つまり、農業としては成り立ち得ない地域なのである。今日の社会においては、こうした自給的農業は無意味なものとして切り捨てられるのが当たり前なのである。人はすべからく職につき、幾ばくかの生活費を稼ぐ場がなければ暮らしていけない。勢い、中山間地域では補助金がでる事業や土建業に頼らざるを得ない。しかしそれは持続しないので、集落崩壊を少し先に延ばすだけのことにすぎない。

 しかしその一方で、世界的に食糧、水が欠乏し、それらの資源を奪い合う国家間紛争の種になっている。わが日本も決して例外ではない。食糧の大半を海外に頼り、その結果、水の乏しい国から大量の水(バーチャルウォーター)を買うという矛盾を抱え込んでいる。今は他国の食糧を買い付けることができているが、そんな時代はいつまで続くのであろうか。破綻は間近に迫っているかもしれない。

 グローバルに活躍することは決して褒められることばかりではない。他人の資源を奪うことでしか成り立たない社会ではなく、自前の自然の中で慎ましく暮らせる社会を選ぶ時期が来ているのではないだろうか。

 食糧生産の現場をつぶして、ひたすら工業製品の製造、サービス、金融に走る社会が持続するはずはない。いい加減に目を覚まそうよ。

 この雪景色の中にというメッセージを見たのである。

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引っ越しをしました

これまで主に、野生動物を対象にした生態学的なエッセイと海外エコツアーに関する記事を掲載してきたのですが、今後はもう少し幅広い記事を発信していこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。

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 写真は主なフィールドとなっている西中国山地の細見谷渓畔林です。ここはツキノワグマの中核的生息地として知られており、原生的自然が色濃く残るところです。

HFMエコロジーニュース116(通算273号)

 クマ調査での思わぬ発見
 10月下旬から11月初旬にかけて、細見谷川流域ではゴギの産卵シーズンとなる。この時期にクマがゴギを求めて小さな沢にやってくるということはこれまでにも何度か報告している。しかしながら、魚影の薄い昨今ではなかなかその現場をつかむことは難しものである。それでも一縷の望みをかけて、某放送局の取材が行われている。
 「さわやか自然百景」とかいうこの番組では細見谷渓畔林の一年を紹介することになっているようだが、その中でツキノワグマの魚食が紹介できればということで協力しているのだ。時間と取材費の制約を受けながらだから、可能性としてはかなり低いがそれでも西中国山地の細見谷渓畔林の素晴らしさは十分紹介できることと思う。
 ここ数年、クマやゴギを取り巻く生息環境の変化は激しい。とくにゴギの産卵床となる沢は集中豪雨や台風で倒れたブナなどの残骸が沢をせき止め、土砂の堆積状況が大きく変わったため、産卵床の数も減少している。しかし渓畔林とは本来そうしたもので、常に攪乱が生じるものである。長い目で見ればそれが多様性と生産性の維持に貢献しているのだろうが、一時的には生存への脅威ともなる。ここ数年は、再生前の状態が続いており、クマにとっては暮らしにくい状況にあるようだ。
 今年は晩夏のブナはそこそこ利用されていたし、ウワミズザクラへの執着も見られたが、秋にはミズキ、クマノミズキ、ウラジロノキ、アズキナシといった液果類が不作だった。クリ、コナラ、ミズナラの堅果類は場所によってはそれなりの収量が見込めたが、あちこちにクマ棚ができるほどでもない。ただ、落下した堅果を拾い食いしている様子が垣間見られたので、ごく少数の個体群ならば何とかやって行けそうではある。
 細見谷のような中核的生息地における痕跡の希薄化とは裏腹に、集落周辺への出没が世間を賑わしていることでクマは増加しているとの風評が流れているが、フィールドを歩いている限りクマの生息環境は悪化の一途をたどっていることは間違いない。すぐに絶滅ということはないにしても、けっして安心できる状況ではないし、むしろ危険な方向へ向かっているように思う。
 クマの痕跡や気配を求めて森(沢筋)をさまようのだが、今回の調査では、思いもかけぬ生物との出会いや生々しくも微笑ましい生活痕にも出会うことができたので、それらを簡潔に紹介してみよう。
20151104-1
痕跡を求めて
 ゴギの産卵現場とクマの補食行動を撮影しようと細見谷川の支流の源流域に入った。所々にゴギのペアが産卵の準備のために集まっているものの、肝腎のクマは姿を現さない。今年はこのあたりに親子連れ(親1,子2)が確認されているが、若い世代のクマは魚食には無関心なのだろうか。
 近くの林道法面では植林されたヒノキの幼齢木が倒れ、地面が割れて空洞ができている。そこにオオスズメバチが何匹も集まって右往左往している。どうやらオオスズメバチの巣があり、クマがその巣を掘り返したようだ。
 このようにクマの痕跡はあるにはあるのだが、その気配は薄い。ゴギの産卵床の状況もいまいちの感じがしたので、しばらくご無沙汰している下流域を見てみることにした。下流域も以前より倒木が多く若干景観が変わってきている。しかし産卵床として利用できる場所は源流域より多い。ただし川幅が少し広く、沢には隠れやすいくぼみや倒木などが多く魚影は上流域より濃いようだが、クマにとっては捕食しにくい環境にちがいない。流れは緩やかで小さな落ち込み、瀬、小さな淵が連続しているのは源流域と変わらない。
 と、沢にかかる朽ちた倒木に鳥の羽毛が散乱している。尾羽の大きさや色からするとツグミのようだが、アカハラかもしれないと同行の杉さんは言う。私が写真をとっている間に杉さんは十数メートル先で川の中を覗き込んでいる。事件が起きたのはこのときだ。子細は後述するとして、少しばかりこの日見つけた野生動物の生活痕の話をしてみよう。
20151104-15
20151104-17 この日は普段歩かないルートをあるきながら沢を取り巻く森林内の状況を把握することにした。沢から離れ、尾根筋を液果の実りの状況とフン、爪痕、食痕などの生活痕を探してみようということだ。
 年をとってくると滑りやすい斜面を歩くのはかなりしんどい。かつてのような広域の探索ができないのもやむを得ないが、その分は経験に裏打ちされた勘が頼りだ。そこで歩きやすい尾根道を歩くことにした。晩秋の落葉林は明るく美しい。空の青さと赤、黄、緑が織りなす色の共演とさわやかな風に疲れを癒やしつつ歩く。
 ゆっくりと歩くことで、様々な生活痕がめに飛び込んでくる。見逃しそうなクマ棚や爪痕、どれも親子と見られる痕跡ばかりだ。大きな個体(オス)の痕跡はない。少しばかり古いがドングリを食べたクマのフンも落ち葉に半ば埋もれて見つかる。
 タヌキのためフンにはサルナシの種子が、それにしても少ない。テンのフンもほとんどない。イノシシの馬耕も少なく、ここ数年全体としてケモノは減少しているようだ。休耕田や廃田が広がる集落周辺での個体数増加とは裏腹に奥山はケモノの過疎化が進行している。
 林道へ出てみると道路端に落ちていたクリの実はすっかりなくなり落ち葉とイガが残るのみ。ミズナラの果実はまだまだ残っている。おそらくクリはクマが拾い食いしてしまったのだろう。法面にはびっしりとクマイチゴが繁茂している。これもケモノを集落へ導く資源となっている。いまやケモノたちは人のいなくなった集落周辺で命をつないでいるのだろう。
 舗装道路の真ん中につぶれたクマのフンを見つけた。つぶれていたが紛れもなくクマのフンである。変なつぶれ方をしているのでよく見てみれば、何とクマの子どもの足跡がくっきり残っているではないか。母親のフンを子どもが踏みつけて行ったのだろうか。ここは2日前に雨が降っているので、足跡はその雨が上がった後に附けられたものの可能性が高い。
 と、今度は道ばたでヒミズ(モグラの仲間)のばらばら死体を見つけた。血の色も鮮やかに頭と尻尾が切り離され、腸管の一部が残るものの胴体部分がない。こんな食べ方をするケモノはいない。杉さんの推測では猛禽類の仕業ではないかと言う。それにしてもきれいに頭と尻尾を切り分けて、律儀に残して言っているのも見事な仕事ぶりだ。このほかにも、アオバトやヤマドリが捕食された痕跡を見つけている。猛禽類が活発に動いている様が見て取れる。ケモノに見られる現象とは対照的な感じを受ける調査行であったが、ここで話を少し戻してみよう。
 猛禽類の食事跡を記録しているそのとき、獣数メートル先で川を覗き込んでいた杉さんの「カワネズミ、早く早く」という叫び声をきいた。私は取るものも取りあえず杉さんの基へ急ぐ。このときの顛末は、杉さんの森便り に詳しい。 実は以前にもこの沢の上流でカワネズミに遭遇している。出会いはいつも突然で瞬間的だ。しかし今回は少しばかり事情が違っていた。カワネズミは小さな淵から30cmほどの落差のある落ち込みの中へ姿を消した。ここは岩盤なので行き止まりのはずなのだが、なかなか姿を見せない。といっても数十秒、せいぜい1分程度なのだろうが。と突然、落ち込みの泡の中から20cmほどのゴギが飛び出してきた。とはいえ最初は何が飛び出してきたのかわからなかったというのが正直なところだ。オレンジ色のものがのたうち回っているのだが、よく見るとそれはゴギでそのゴギに灰銀色のものが食らいついているのだということがわかるまでに一瞬の間があった。カワネズミがゴギに食らいついているのだ。写真写真と思いつつ夢中でシャッターを切った。しばらく格闘は続いていたが、やがてカワネズミは諦めたのか我々の存在が気になったのか、ゴギから離れて、上流へ駆け上っていった。しばらくは先ほどの落ち込みに姿を消したが、そこから出てきたかと思うとさらに上流へ滝登りを敢行し、岩陰に姿を消した。すぐにその岩の下を調べてみたら、いくつかの隙間が空いており、そこが巣穴につながっているようで、この先姿を見ることはできなかった。
20151104-4
kawanezumi-1 さて夢中でシャッターを押した結果だが、家にかえってよくよく調べてみると、画像は水でゆがんでいるものの、尾びれと尻びれの間あたりに腹側からかみついているカワネズミと仰向けになってオレンジ色の腹部をみせているゴギが確認できた(写真中央部、原盤でないと難しいかも、下は拡大した写真)。獲物が大物過ぎたのと食らいついた位置が悪かったことで、小さなカワネズミが振り回され、仕留めることがかなわなかったようだ。
 一見、生物の気配がないような沢であるが、丹念に探してみると案外多くの痕跡や事件が起きていることに気づかされた一日であった。 陸棲のケモノにとっても水辺という環境は特に重要な意味を持っているに違いないと言うことを改めて感じた次第である。
 ということで、まあまあ実りのある調査行でした。
 
 編集・金井塚務 発行・広島フィールドミュージアム
この調査は、広島フィールドミュージアムの活動として行っています。当NGOは細見谷渓畔林を西中国山地国定公園の特別保護地区に指定すべく調査活動を行っています。特にツキノワグマにとって重要な生息地であり生物多様性に秀でた細見谷渓畔林域はツキノワグマサンクチュアリとして保護するに値する地域です。
    広島フィールドミュージアムの調査研究&自然保護活動はすべてカンパによって行われています。
皆様のご協力をお願いします。                                                             
 カンパ送付先 
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または  
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