生きもの千夜一話 by 金井塚務

大型ほ乳類の生態学的研究に関するエッセイ、身の回りの自然、旅先で考えたことなどをつれづれに書き連ねました。

CONFE

やんばるの森事情・番外編

ときおり大粒の雨が激しくたたきつける中、やんばるでの伐採地の視察を行った。今年(2,019年度)の国頭村村有林の伐採予定地は3カ所。宇嘉2.00ha, 宜名真2.00ha,と辺土の3.00haである。このうち前2地区、宇嘉と宜名真の森林は林道沿いの一部はリュウキュウ…

やんばるの森事情6-乾燥化がもたらすもの

数年前のことだが、アメリカ中西部へ野生動物を求めて出かけていったことがある。そこは半砂漠のような乾燥地であるから、湿度の高い日本に暮らしている者にとってはかなりのストレスとなる。放っておくと膚は乾燥して指先にはささくれができたり、唇はひび…

やんばるの森事情5-枯れ木の効能

前回は森林の皆伐がノグチゲラの生活の脅威となっていることを指摘しておいたが、今回は枯れ木の効用について考えてみよう。 長い間伐採を逃れてきたやんばるの森を覗いてみると、写真の様な太い枯れ木が林内に点在していることに気づく。これらはおそらく、…

やんばるの森事情4-イタジイとノグチゲラ

やんばるの森を歩いていると、太い木の幹、地上数mの高さに直径数センチの穴が空いているのを見つけることがある。 よくよく観察してみるとこうした穴にはある特徴が認められる。まず穴はそのほとんどがイ20cmを超えるタジイの幹に穿たれていること。そし…

やんばるの森事情 3 森は生物の暮らしの場

前回はオキナワウラジロガシについてでしたが、少しだけ補足しておきます。 やんばるに産する樹木はたいてい成長が速く、材質が柔らかく耐久性に問題が有り、建築材などには余り適していない。そのかなではオキナワウラジロガシ、イジュ、モッコク、イヌマキ…

やんばるの森事情 2 オキナワウラジロガシの話

やんばるの森は、照葉樹に覆われた亜熱帯の森であるが、それがどのようなものななのか本土の人間にとってあまり馴染みがないのである。本土だけではなく、沖縄県民でも都市に暮らす人たちにとってはやはり馴染みの薄いようなので、本土の人にとっては一段と…

やんばるの森事情 1 やんばるの森散策

前回は森林伐採の現場を紹介したが、こうした森林伐採がやんばるの生物多様性にいかなる影響を与えるかということを考えてみたい。だがその前に、そもそもやんばるは本来の森林って?、そこはどんな世界なのか、どのような生きものが暮らしているのか、とい…

2019年やんばる紀行-森林破壊の現場を歩く

暖冬とはいえまだ肌寒さが残る広島の我が家を出て、岩国空港へ。ここから約2時間ほどのフライトで沖縄県那覇空港に着く。3月2日土曜日、那覇は薄曇り。機外へでるとねっとりした暖気が身体を包み込む。やはり那覇はもう夏だ。Tシャツだけでも十分暑い。空港…

生物多様性に配慮した人工林の間伐施業を目指してー細見谷渓畔林

先日、細見谷渓畔林域の人工林の間伐をどのように進めるかという点について、広島森林管理署から意見を聞きたいとの申し出が有り、広島森林管理署署長以下、総括森林整備官、主任森林整備官の来訪を受けました。 細見谷を縦貫する計画だった大規模林道(緑資…

北ノ俣沢を歩くーその4 斜面崩落の意味

ブナ-ミズナラの夫婦樹から湛水域の終点まではもう2Kmほど北ノ俣沢を遡上しなければならない。その前にもう一カ所、風穴の温度測定をしなければならない。その風穴はかなり遅くまで積雪が溶けずに残るところにできた累石型の風穴で、対岸(左岸)の大規模な…

北ノ俣沢を歩く-その3 ブナとミズナラの夫婦樹

ブナとミズナラの夫婦樹 ともかく昼飯をすまして、さらに上流を目指す。河原へ出てすぐのところで見つけた風穴へ温度測定にむかう。風穴は左岸と右岸にそれぞれ1カ所ずつあるが、まずは右岸の風穴へむかう。ちょっと見にはなんの変哲もない川沿いの森なのだ…

二つ目のクマゲラの巣穴(HFM-122)

4度目の北ノ俣沢-その2 二つ目のクマゲラの巣穴 崩落地と園周辺の風穴での温度測定を終え、さらに上流を目指す。左岸の高茎草原で鮮やかなムラサキ色の花の群落を見つけた。花はトリカブトに間違いない。だが葉は見慣れたトリカブトよりも幅広で厚い。どう…

成瀬ダム予定地の自然ー北ノ俣沢を歩いて(HFM121)

4度目の北ノ俣沢- その1 2016年、つまり今年のことだが、なかなか台風が発生しないと思っていたら、8月に入って突然、台風多発状態になった。しかも日本近海で発生し、関東、東北、北海道といった台風常襲地帯とはことなる場所で大きな被害をもたらした。一…

北ノ俣沢は雨だったー濁流でのイワナの食べ物 (120)

秋田県雄勝郡東成瀬村への3回目の調査行である。今回は川沿いの森林植生についてより具体的なデータを集めることを目的としていたので、測量の専門家のKさんも同行しての本格的調査である。 前の2回の調査は天候にも恵まれていたが、今回は梅雨真っ最中の調…

クマゲラの巣を見つけた!! (119)

クマゲラって鳥、知ってますか?真っ黒な身体に赤いベレー帽といった出で立ちのキツツキである。 本州には、アカゲラ、オオアカゲラ、アオゲラ、コゲラ、アリスイといったキツツキの仲間が暮らしており、時折見かけることがある。とくにスズメほどの大きさの…

成瀬ダム予定地-北ノ俣沢を歩く (118)

前回、ダム予定地を下見した様子を報告したが、そのときは雪解け水で増水した沢を歩く事ができなかったので、(地図の赤いピンマークを通るように)中腹を迂回するように歩いたのである。今回は鳥の調査(担当花輪さん)に同行して北ノ俣沢と木賊(とくさ)…

HFMエコロジーニュース117ー秋田・成瀬ダム予定地を歩く

成瀬ダム予定地を歩く 秋田県南東部、岩手県・宮城県との県境近くに東成瀬村はある。成瀬ダムは利水、治水を目的とした多目的ダムであるが、多目的は往々にして無目的であることはよく知られた事実である。当然地元では貴重な自然を破壊する事業として反対運…

やんばる地域の国立公園化計画の問題点

沖縄本島北部のやんばる地域を世界自然遺産登録を目指す政府は、同地域の国立公園化を計画している。しかしこの計画ではやんばるの自然を保護するためのものではなく、かえって多くの生物の生息地の分断をもたらし、孤立した個体群の衰退を招く危険性がある…

実質勝訴判決・やんばる訴訟

2015年3月18日午後2時、沖縄県那覇地裁101号法廷は緊張した面持ちの傍聴人であふれていた。裁判官が入廷し、2分間の冒頭撮影が済むと、おもむろに判決主文の申し渡しがあった。1.本件訴えのうち、被告が別紙林道目録記載1ないし30の各林道の開設…

HFMエコロジーニュース109(266)

ブナハアカゲタマフシ 通い詰めた地域でも、おやっ?と思う出会い、発見があるのが自然というものである。5月6日、巷間で言われるゴールデンウイーク最終日に当たる日曜日。西中国山地細見谷はほとんど人影もなく、強い日射しにブナの若葉が輝いていた。一年…