生きもの千夜一話 by 金井塚務

大型ほ乳類の生態学的研究に関するエッセイ、身の回りの自然、旅先で考えたことなどをつれづれに書き連ねました。

北ノ俣沢を歩く-その3 ブナとミズナラの夫婦樹

ブナとミズナラの夫婦樹 ともかく昼飯をすまして、さらに上流を目指す。河原へ出てすぐのところで見つけた風穴へ温度測定にむかう。風穴は左岸と右岸にそれぞれ1カ所ずつあるが、まずは右岸の風穴へむかう。ちょっと見にはなんの変哲もない川沿いの森なのだ…

二つ目のクマゲラの巣穴(HFM-122)

4度目の北ノ俣沢-その2 二つ目のクマゲラの巣穴 崩落地と園周辺の風穴での温度測定を終え、さらに上流を目指す。左岸の高茎草原で鮮やかなムラサキ色の花の群落を見つけた。花はトリカブトに間違いない。だが葉は見慣れたトリカブトよりも幅広で厚い。どう…

成瀬ダム予定地の自然ー北ノ俣沢を歩いて(HFM121)

4度目の北ノ俣沢- その1 2016年、つまり今年のことだが、なかなか台風が発生しないと思っていたら、8月に入って突然、台風多発状態になった。しかも日本近海で発生し、関東、東北、北海道といった台風常襲地帯とはことなる場所で大きな被害をもたらした。一…

北ノ俣沢は雨だったー濁流でのイワナの食べ物 (120)

秋田県雄勝郡東成瀬村への3回目の調査行である。今回は川沿いの森林植生についてより具体的なデータを集めることを目的としていたので、測量の専門家のKさんも同行しての本格的調査である。 前の2回の調査は天候にも恵まれていたが、今回は梅雨真っ最中の調…

クマゲラの巣を見つけた!! (119)

クマゲラって鳥、知ってますか?真っ黒な身体に赤いベレー帽といった出で立ちのキツツキである。 本州には、アカゲラ、オオアカゲラ、アオゲラ、コゲラ、アリスイといったキツツキの仲間が暮らしており、時折見かけることがある。とくにスズメほどの大きさの…

成瀬ダム予定地-北ノ俣沢を歩く (118)

前回、ダム予定地を下見した様子を報告したが、そのときは雪解け水で増水した沢を歩く事ができなかったので、(地図の赤いピンマークを通るように)中腹を迂回するように歩いたのである。今回は鳥の調査(担当花輪さん)に同行して北ノ俣沢と木賊(とくさ)…

HFMエコロジーニュース117ー秋田・成瀬ダム予定地を歩く

成瀬ダム予定地を歩く 秋田県南東部、岩手県・宮城県との県境近くに東成瀬村はある。成瀬ダムは利水、治水を目的とした多目的ダムであるが、多目的は往々にして無目的であることはよく知られた事実である。当然地元では貴重な自然を破壊する事業として反対運…

タムシバについて考える-HFMエコロジーニュース116

季節の移ろいは速い。特に春はそうだ。駆け足でやってきて、あっという間に通り過ぎてしまう。私は宮島の対岸に居をかまえているのだが、4月上旬にはすでに花は散り葉桜の趣を見せ始めている。しかし同じ廿日市市内でも北部吉和地区は標高も高いこともあって…

HFMエコロジーニュース115-細見谷へ春を探しに

例年だと、雪が解けて細見谷へ入れるようになるのが4月中旬から下旬なのだが、今年はどうやら雪解けも早いのではないかとという気がして、まだ3月だというのに杉さんと一緒に下見に出かけた。 案の定、主川をさかのぼって林道入り口付近まで来ると、斜面には…

やんばる地域の国立公園化計画の問題点

沖縄本島北部のやんばる地域を世界自然遺産登録を目指す政府は、同地域の国立公園化を計画している。しかしこの計画ではやんばるの自然を保護するためのものではなく、かえって多くの生物の生息地の分断をもたらし、孤立した個体群の衰退を招く危険性がある…

うんちコロコロうんちはいのち

うんちコロコロうんちはいのち きむらだいすけ さく・え岩崎書店 2016年 うんちは排泄物とも呼ばれるように、多くの人は、不要なものいらないもの、あってはならないものと考えているかもしれない。たしかにうんち(フン)は動物が消化できないものを身体の…

消えゆく集落・消える食糧生産の現場

この冬はどこも雪が少なく、寒暖の差が激しい。この急激な温度変化は生き物に大きな影響を与えるに違いない。場合によっては地域個体群の絶滅にもつながる可能性もあるだろう。このことについてはまた別の機会に譲ることにするが、温暖化がもたらすこうした…

引っ越しをしました

これまで主に、野生動物を対象にした生態学的なエッセイと海外エコツアーに関する記事を掲載してきたのですが、今後はもう少し幅広い記事を発信していこうと思っています。どうぞよろしくお願いします。 写真は主なフィールドとなっている西中国山地の細見谷…

HFMエコロジーニュース116(通算273号)

クマ調査での思わぬ発見 10月下旬から11月初旬にかけて、細見谷川流域ではゴギの産卵シーズンとなる。この時期にクマがゴギを求めて小さな沢にやってくるということはこれまでにも何度か報告している。しかしながら、魚影の薄い昨今ではなかなかその現場をつ…

細見谷にクマの痕跡を追って-HFM エコロジーニュース115

年々歳々、ツキノワグマの中核的生息地と言われている、細見谷流域でも痕跡が希薄になりつつある。その一方で、集落周辺への出没が問題視されているのも事実である。クマの集落への出没は、多くの場合、個体数の増加と山の実りの多寡と関連づけて報道されて…

HFMエコロジーニュース114

難航した細見谷調査行 細見谷渓畔林を舞台に、某TV番組の取材が進行している。ここに生息しているツキノワグマの生態もその対象となっており、真夏の渓畔林に稔るウワミズザクラの果実を目当てにやってくるクマの姿を記録するために設置したカメラを回収すべ…

HFMエコロジーニュース113(通算270)

アカショウビンの巣作り 前回の調査行では、ミゾゴイのペアを発見していたので、その後の状況を把握しようと出かけたのだが、あいにくミゾゴイとの出会いは果たせなかった。今、細見谷渓畔林を題材とした某自然番組の取材中なので、その素材探し(とはいって…

HFMエコロジーニュース112

<ミゾゴイにであった> 雪もようやく消えたようなので、久しぶりに細見谷へ出かけてみた。この春初めての調査行であった。最近の細見谷は台風やどか雪のせいで林道も荒れ気味だから、どこまで入れるか少し心配していた。吉和入り口から下山林道入り口までは…

実質勝訴判決・やんばる訴訟

2015年3月18日午後2時、沖縄県那覇地裁101号法廷は緊張した面持ちの傍聴人であふれていた。裁判官が入廷し、2分間の冒頭撮影が済むと、おもむろに判決主文の申し渡しがあった。1.本件訴えのうち、被告が別紙林道目録記載1ないし30の各林道の開設…

HFMエコロジーニュース111(268)

2014-05-28 11:19:47 | ニュース 鳥獣保護法改定-個体数管理では解決しない野生生物の保全 2014年5月23日に鳥獣保護法が一部改正された。今後は「改正法案では、集中的に頭数を管理する必要があるシカやイノシシなどの鳥獣を環境相が指定、都道府県や国が捕…

HFMエコロジーニュース110(267)

ウガンダ紀行 その6 チンパンジー観察記@キバレ&カリンズ ウガンダエコツアーの目玉は、なんと言ってもマウンテンゴリラとチンパンジーという大型類人猿の観察にある。これまで霊長類学を専攻してきたものとしては、これらグレイトエイプ(大型類人猿)の…

HFMエコロジーニュース109(266)

ブナハアカゲタマフシ 通い詰めた地域でも、おやっ?と思う出会い、発見があるのが自然というものである。5月6日、巷間で言われるゴールデンウイーク最終日に当たる日曜日。西中国山地細見谷はほとんど人影もなく、強い日射しにブナの若葉が輝いていた。一年…

HFMエコロジーニュース108(265)オケラを食う-タイの昆虫食

すっかりなじみが薄くなってしまったケラ(おけらと呼び習わしている)であるが、どんな昆虫か覚えていますか?昔、子どもの頃によくやっていた遊びの中に、このケラを捕まえて「おまえの○○どーのくらい?」といいながら、すこし指に力を入れると、このケラ…

ニュース107(264)細見谷調査行ーカエル合戦ー

全国各地で桜の開花が早いという。 最近の日本の気象が春も秋も短く冬が終わると即初夏となり、長い夏が終わると即、冬というような感じがする。こうした気象の変化が生物の世界にも影響を与えているに違いないのだが、それがどのようなものかすぐにはわから…

ウガンダ紀行ーその5

<キバレへ> 朝9時過ぎにカンパラを出発して2時間半ほどがたった。すこし空腹を感じ始めてきたところだ。 あと30分も走ればムベンデ(mubende)という町に着く。カンパラから150Kmほどのところにあり、フォートポータルとの中間地点に位置する町である。 地…

HFMエコロジーニュース105(262)

<いざ、サファリツアーへ> さて、無事買い物を終えホテル(Shngri-La Hotel)に宿泊した一行はよく3月24日午前9時カンパラを発って、最初の目的地キバレ(Kibale)へとむかった。このサファリツアーは8泊9日間の日程で、ウガンダのサバンナ、湿地、森林で…