生きもの千夜一話 by 金井塚務

大型ほ乳類の生態学的研究に関するエッセイ、身の回りの自然、旅先で考えたことなどをつれづれに書き連ねました。

タイ旅行の思い出 2 初めてのカオヤイ国立公園

 バスを乗り継いでなんとか無事、宿泊予定のパームガーデンロッジへたどり着いて、腹ごしらえも済んだところで、いざ、カオヤイ国立公園へ。マダムが運転する車で、ひたすら北へ向かって走る。カオヤイとは広大な山というほどの意味らしいが、まだその山は遠くにあり、平原をひた走る。とやがて道は公園入り口のゲート(サウスチェックポイント)にさしかかる。ここで入園手続きをすませて、車はさらに先へ。ここから道は徐々に上り勾配となり、森林地帯を駆け上がる。周辺の森林は日本の照葉樹林とどこか似ていてどこか違っている。時期が雨期でもあったので、湿度の違いは肌で感じることもできた。しかしここまで標高が上がってくると、蒸し暑さはそれほどでもない。むしろ空気はひんやりとしている。夕方近くということもあって、この日は中央ハイウエイ沿いをヴィジターセンタまでをドライブするだけ。広大な公園を南北に貫くハイウエィを走っていると所々にゾウのフンが転がっている。すこし興奮気味になっていると突然マダムが「チャーン」と叫ぶ。道ばたにゾウがたっている。牙はまだそれほど伸びていないの若いオスだ。左耳たぶに大きな破れがある。しばらく野生のゾウに見とれていると、やがてゆっくりと森の中へ消えていった。下見の下見旅の途中で、若いオスのゾウに出会うという幸運に恵まれた。このオスは7年後ににも再会することになる。

 しばらく周辺で痕跡を観察してみると、足跡やフン、なぎ倒された樹木などが見つかった。確かな生活痕に軽い興奮を覚えるが先を急ぐ。もう日が傾き掛けている。

 この日は途中、ヘオ・ナロックの滝に立ち寄ってヴィジターセンタ―まで行って、帰ってきた。雨期のカオヤイ国立公園は厚い雲が低く立て込めていた。今にも大粒の雨が落ちてきそうだ。この日出会えた野生動物は、ブタオザルとホエジカだけだったが、明日のトレッキングでの出会いが期待できそうな予感がした。とはいえ、この時はまだ、その後約10年のカオヤイ国立公園通いが始まることは夢想だにしていなかった。

夕暮れ前に湖畔のレストランで夕食をとり、宿へ。

 

まだまだ、続く。