生きもの千夜一話 by 金井塚務

大型ほ乳類の生態学的研究に関するエッセイ、身の回りの自然、旅先で考えたことなどをつれづれに書き連ねました。

2019-01-01から1年間の記事一覧

クマにあったらどうする?マニュアルを信用するな!

この秋はクマの話題に事欠かない。今年は特に都市部へのクマの出没と人身事故の多発しているという。私のところへも時折新聞者やテレビ局から取材がある。多くはその原因についての見解を求める内容なのだが、必ず、「クマと出会ったらどうしたら良いのでし…

やんばるの森事情・番外編

ときおり大粒の雨が激しくたたきつける中、やんばるでの伐採地の視察を行った。今年(2,019年度)の国頭村村有林の伐採予定地は3カ所。宇嘉2.00ha, 宜名真2.00ha,と辺土の3.00haである。このうち前2地区、宇嘉と宜名真の森林は林道沿いの一部はリュウキュウ…

やんばるの森事情6-乾燥化がもたらすもの

数年前のことだが、アメリカ中西部へ野生動物を求めて出かけていったことがある。そこは半砂漠のような乾燥地であるから、湿度の高い日本に暮らしている者にとってはかなりのストレスとなる。放っておくと膚は乾燥して指先にはささくれができたり、唇はひび…

やんばるの森事情5-枯れ木の効能

前回は森林の皆伐がノグチゲラの生活の脅威となっていることを指摘しておいたが、今回は枯れ木の効用について考えてみよう。 長い間伐採を逃れてきたやんばるの森を覗いてみると、写真の様な太い枯れ木が林内に点在していることに気づく。これらはおそらく、…

やんばるの森事情4-イタジイとノグチゲラ

やんばるの森を歩いていると、太い木の幹、地上数mの高さに直径数センチの穴が空いているのを見つけることがある。 よくよく観察してみるとこうした穴にはある特徴が認められる。まず穴はそのほとんどがイ20cmを超えるタジイの幹に穿たれていること。そし…

アサリ漁の復活はあるか

私の住んでいる廿日市市大野地区は、知る人ぞ知る「大野あさり」の産地である。宮島の対岸の干潟(前潟)は大野瀬戸に面し、永慶寺川、毛保川などの小河川が流入する砂礫干潟である。干潟の規模はさして大きくはないが、以前からアサリの産地として漁が営ま…

やんばるの森事情 3 森は生物の暮らしの場

前回はオキナワウラジロガシについてでしたが、少しだけ補足しておきます。 やんばるに産する樹木はたいてい成長が速く、材質が柔らかく耐久性に問題が有り、建築材などには余り適していない。そのかなではオキナワウラジロガシ、イジュ、モッコク、イヌマキ…

シカのフンからガラスを作る

サル・シカ・原始林ニュース 139号 2003.04.23 やけくそで作ったガラスー宮島野外博物館セミナーリポートー という記事があったのを思い出した。このサル・シカ・原始林ニュースはこの後、HFMエコロジーHFMエコロジーニュースへと発展し、このブログへとつ…

やんばるの森事情 2 オキナワウラジロガシの話

やんばるの森は、照葉樹に覆われた亜熱帯の森であるが、それがどのようなものななのか本土の人間にとってあまり馴染みがないのである。本土だけではなく、沖縄県民でも都市に暮らす人たちにとってはやはり馴染みの薄いようなので、本土の人にとっては一段と…

やんばるの森事情 1 やんばるの森散策

前回は森林伐採の現場を紹介したが、こうした森林伐採がやんばるの生物多様性にいかなる影響を与えるかということを考えてみたい。だがその前に、そもそもやんばるは本来の森林って?、そこはどんな世界なのか、どのような生きものが暮らしているのか、とい…

2019年やんばる紀行-森林破壊の現場を歩く

暖冬とはいえまだ肌寒さが残る広島の我が家を出て、岩国空港へ。ここから約2時間ほどのフライトで沖縄県那覇空港に着く。3月2日土曜日、那覇は薄曇り。機外へでるとねっとりした暖気が身体を包み込む。やはり那覇はもう夏だ。Tシャツだけでも十分暑い。空港…

ニホンザルのスギ花粉症-発見物語

2019年3月14日付けの毎日新聞1面にニホンザルの花粉症に関する記事が掲載されていました。淡路島モンキーセンターに花粉症のサルがいるという、いわゆる季節の話題といった記事なのですが、この記事からは何時どのようにしてサルの杉花粉症が見つかったのか…

サルと屋久島・ヤクザル調査とフィールドワーク

私がいわゆるサル学を志したのは、1973年のことである。S大学の生化学科に入ってまもなくのことだ。大学に入るまでに時間を要した私は、それなりに多くの疑問を抱き、やっと生命とは何かという問題に取り組んでみようと思い出していた。 医学部の受験に失敗…