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生きもの千夜一話 by 金井塚務

大型ほ乳類の生態学的研究に関するエッセイ、身の回りの自然、旅先で考えたことなどをつれづれに書き連ねました。

HFMエコロジーニュース115-細見谷へ春を探しに

 

 例年だと、雪が解けて細見谷へ入れるようになるのが4月中旬から下旬なのだが、今年はどうやら雪解けも早いのではないかとという気がして、まだ3月だというのに杉さんと一緒に下見に出かけた。 案の定、主川をさかのぼって林道入り口付近まで来ると、斜面には少しばかり雪が残っている。さすがに早まったようだ。それでもと、林道へ入ってみたが、300mほど行ってみたものの、その先の林道にはまだしっかりと雪が残っていた。あえなく断念する。

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 山腹のブナを見るとイヌブナの花芽、葉芽があかく膨らんでいるのがわかる。もうすぐ芽吹きだ。そしてこの膨らんだ花芽を目当てにクマがやってくるかもしれない。細見谷ではブナの花芽を食べたフンをいくつか見つけているが、比較的少ないのは何故だろう。沢筋のオタカラコウやササの新芽(タケノコ)やシシウドなどにより引きつけられるのだろうか。
 渓畔林行きを断念し、支流の一つろくろ沢へ入ってみる。空気はあくまで冷たいが、日射しは強く春が近いことを肌で感じる事ができる。この時期にしては水量が少ないが透明度は高く、その清冽さはなんともいえずいいものだ。所々にゴギの産卵床らしいものも見えるが、どうも生き物の気配は薄い。チャルメルソウもまだ芽吹き前だし、残雪の上にはトチ実の殻やブナの殻斗、枯れ葉が冬の名残をとどめている。

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 沢筋に一つ、フキノトウが顔を出していた。春一つ、発見。

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 こころくろ沢は生き物の気配の濃いいい沢だったのだが、年々、巨木が姿を消し、沢の状態も悪化しているようだ。特に今年は、雪の降り方が例年とは違って、湿って思い雪がどかっと降っては溶けを繰り返したようで、トチノキ大枝がねじれ折れてい、それが沢を夫妻であちこちに小さなダムを形成し、よどみが増えている。それに伴い、河床には泥が堆積し、大きく様相を変化させている。
 そうしたよどみに、おしどりがひっそりと越冬しているのが見えた。この沢周辺はおしどりが営巣するのに都合の良い樹洞が多く、貴重な繁殖地となっているようだ。

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 沢沿いの湿地で妙なものを見つけた。動物の毛のようなものだが、どうやらノウサギのものらしい。ノウサギの毛皮は捕食者に捕まるとすぐに破れてしまう。皮を斬らせて身を助くということのようだ。この谷にはオオタカハイタカ、フクロウはもちろんクマタカも姿を見せ、猛禽類の狩り場ともなっている。ノウサギも安閑とはしていられないのだ。 そうこうしているうちに、黒い雲が広がり、雪がちらついてきた。寒い。
 ヒキガエルもまだ出てきてはいない。あと2週間で一気に春となりそうな気配を感じつつ、ろくろ沢を後にした。

追記
 今年の雪はスギの植林地にも被害をもたらしている。手入れの悪い植林地のスギは、生育も悪く、細いスギが密に生育しているので、まるで楊枝の林のようにみえる。そこに重たい雪が枝に積もるのだから、少し強い風でも吹けばたちまち折れて倒れてしまう。主川沿いの植林地でもそんな光景を見ることができる。ただこうして折れたスギの植林地はやがて林床に陽が差し、埋土種子が芽吹いて本来の植生が復活する可能性が高い。すこしそっとしておくことも一つの方法ではある。

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